Afraid Aid
2013.03.03 Sunday |

"森の女神"
だったっけ、ここの館…
クライド兄さんが珍しく、出かけよう、なんて言うものだから…
行き先も目的も聞かずに馬車に乗り込んだ。
初めて訪れるけれど、木漏れ日のような光が差し込む、不思議な館だ。
当主・シェーンハルス伯爵の人脈と実力があってこその繁栄か…。
我が館 ―― ル・シュヴァリエ・デュ・リオンドールに引けを取らない程、広大な敷地と大きな屋敷。
…いつかこの館も…
いや、縁起でもないこと言っちゃだめだな!
ただ…
父上は今までこんなに難しいことを一人でやってたんだって思うと、僕にはやっぱり、
ドーソン伯爵家を継ぐ資格はないと思ってしまうんだ。
公務や投資、他家との熾烈な競い合いもあったろうし、
僕たちや使用人の心配もしてくれてた。
館を継ぐってことは、十分な実力がある人間が必要なんだ。
数多の名家の実力者が集う社交界で、
なんの後ろ盾もない僕が相手にされるはずは、当然ない。
…やっぱり、僕には無理だよ、クライド兄さん…。
僕が人の顔と名前を覚えるのが苦手だって知ってるだろ!
一回のパーティで何十人の人と会うのに、それは致命的だろ!
みんなおでこに自分の名前を書いておけばいいんだ…っ!
例えばほら、あんなメイドの一人なんか覚えられるはずが…
あれ、あのメイド…どこかで見た覚えが…?
気のせいかな…。
あ、…それに、向こうでスクワットしてる、あのツンツン頭…
あの変な頭のヤツも見たことあるような気がする…
どこだったかな…
うーん…
覚えてるのに、思い出せない…
って、あれ?
兄さん…?
ちょっと、クライド兄さん、置いていかないでよ!
: アルヴァ : - : - : posted by La Dea delle Foreste :