La Dea delle Foreste
ラ・デア・デル・フォレスタで起こる日々の出来事・・・

affettuoso                 


長い指に、少しだけ角ばった綺麗な手が、乱れた髪をすくう。

見慣れたはずの、その手に、いつもより心地よさを感じる。

手際よく、髪飾りを直し、髪を整えていく手の持ち主に、言葉は無い。


さっきまでの出来事が、頭の中を何度も過ぎる。

込み上げてくる、色々な感情が、出かけては消える。

しばらく、外の風の音と、遠くで聞こえるパーティーの喧騒だけが、部屋の中に聞こえていた。



次第に、たまらなくなって自分から、声を出す。

「……馬鹿なことを……」

そうじゃ、ないの。

けれど、鏡越しに映る表情に、大きな変化は無かった。
ただ、静かに目を閉じて、「申し訳ございません」と、一言呟く。

静かに。
けれど、私には合図だった。

「……馬鹿なことを……!
 もし、お兄様が現れなかったら、どうするつもりだったの?!
 貴方がいなくなって、私が喜ぶとでも思ったの?!
 貴方が死んで、私が幸せになれるとでも思ったの?!」

そういうことを、言いたいわけじゃ、ないのに。

けれど、抑えられなかった。
止まったはずの涙が、また溢れてくる。

――貴女様が幸せになれるのであれば……

その言葉が、頭の中で木霊する。

「ばか!!
 本当に、馬鹿だわ!!
 最低よ!!!!

 赦さないんだから。
 今度……同じことを言ったら、
 絶対に赦さないわ!!!!」


気がつけば、ずっと傍に居たの。
幼い頃から、ずっと。
当たり前だと思っていた。
貴方がいることが、
傍にいることが、
当たり前だと思っていた。

いつも人を馬鹿にして
いつもデリカシーのないことばかり言って
呼んでもすぐに来ないし
いちいち、回りくどいし

最低で
執事失格で………


「貴方じゃなきゃ、駄目なのよ…… 

 他の、誰でもない……」


顔をあげた、その時
優しい手が、頬を流れる涙を拭う。

「せっかく直した化粧が、台無しでございますね」

鏡越しに映る顔。
優しく微笑んでいる……

「本日のロベルティーネ様は、随分とお顔がお乱れのようですね」

ゆっくりと、いつものように言葉を紡ぐ。

「……うるさいわね。
 あなたの顔だって、随分とひどいわよ」

そう言って、今度は私が、涙を拭う。
みっともない顔だけれど、自然と笑みが溢れる。




「いいこと?

 居なくなるなんて、ゆるさないのだから。

 これからも、私の傍に居なさい。
 
 ずっとよ。

 死ぬまで、ずっと。

 いいわね、ジュリオ!」

: 長女・ロベルティーネ : - : - : posted by La Dea delle Foreste :
: 1/6 : >>